こんにちは。大学生向け・学年不問のビジネスコンテスト、CAREER ROOKIES運営事務局です。
本記事では、中小企業・スタートアップが体験型マーケティングを低予算で実践する方法について、パナソニック株式会社および北海道上川町の実例をもとに解説します。
【こんなお悩みを抱える担当者様はぜひご覧ください】
- Z世代に自社の商品・サービスをどう届ければいいかわからない
- 体験型マーケティングに興味はあるが、大きな予算もリソースもない
- イベントや施策を打っても「企画倒れ」で終わってしまう
【この記事でわかること】
- 体験型マーケティングの正確な定義と、よく混同される概念との違い
- 中小企業が低予算で実践できる4つの具体的アプローチ
- 失敗しないために押さえるべき3つの注意点
- 大企業・自治体でも採用されている「学生共創型」の実践事例
体験型マーケティングとは何か
体験型マーケティングとは、消費者が商品・サービスを広告として「見る」のではなく、自分ごととして「体験する」プロセスを通じてブランド認知・購買意欲・ロイヤリティを高めるマーケティング手法のことを指します。
よく混同されるのが「イベントマーケティング」との違いです。イベントマーケティングは「場を設けること」が目的になりやすく、体験の質よりも集客数や露出が評価軸になりがちです。一方、体験型マーケティングは参加者が何を感じ、どう行動が変わるかを設計の出発点に置きます。イベントはあくまで手段のひとつです。
また「コンテンツマーケティング」との混同も見られます。コンテンツマーケティングが記事・動画・SNS投稿など「情報」を通じて顧客との関係を築くのに対し、体験型マーケティングはリアルまたはリアルに近い参加体験そのものが価値になります。両者は排他ではなく、組み合わせることで相乗効果が生まれます。
さらに混同されやすいのが「体験マーケティング(エクスペリエンス・マーケティング)」という言葉です。これは顧客体験(CX)全体の設計を指す概念であり、体験型マーケティングより広義の言葉です。本記事が扱うのは、特定の施策・プログラムの中で参加者が能動的に関わる「接点設計」としての体験型マーケティングです。
なぜ今、中小企業こそ体験型マーケティングが必要か
広告費をかけても届かない、という感覚は多くの中小企業担当者が共有しています。その背景には、消費者行動の構造的な変化があります。
電通の「日本の広告費」によると、2023年のインターネット広告費は3兆円を超えており、デジタル広告のコスト競争は激化する一方です。大手が予算を積み上げる市場において、中小企業が同じ土俵で戦うことは現実的ではありません。
一方でZ世代(1990年代後半〜2010年代前半生まれ)を中心に、「共感した体験をシェアする」という消費行動が定着しています。広告を「避けるもの」として認識しているZ世代に対して、一方向の情報発信は効果が薄い。逆に言えば、「自分が体験した」「自分が関わった」と感じさせることができれば、自発的な口コミ・UGC(ユーザー生成コンテンツ)につながります。
体験型マーケティングが中小企業にとって有効な理由はもう一つあります。大企業と違い、意思決定が速く、現場の担当者が直接動けるため、参加者との関係性を丁寧に育てやすいのです。スピードと距離の近さは、中小企業だけが持てる強みです。
中小企業が低予算で実践できる体験型マーケティング4つのアプローチ
体験型マーケティングは、大規模なイベント会場や大きな予算がなくても実施できます。重要なのは「誰に・何を体験させるか」の設計です。以下に、中小企業が実践しやすい4つのアプローチを整理します。
目的①商品理解の促進|ターゲット層に「使う体験」をさせたい
商品の良さを言葉で説明するより、実際に使ってもらう方が圧倒的に伝わります。ポイントは「使わせてお終い」にしないことです。体験後に感想を言語化・コンテンツ化するプロセスまで設計することで、マーケティング資産になります。
具体的な手法としては、少人数のモニター体験会・ワークショップ型の商品説明会・ユーザーインタビューと組み合わせたサンプリングなどが挙げられます。オンライン開催であれば会場費もかかりません。
◾️ 向いているケース:新商品の認知拡大・購入前の不安を取り除きたい・口コミを起点にしたい
目的②ブランド共感の醸成|自社の世界観をターゲットと一緒に作りたい
一方的に「ブランドの価値観を発信する」のではなく、ターゲット層が「自分もその世界観の一員だ」と感じる体験を設計する手法です。消費者参加型のコンテンツ制作・共同企画・アンバサダープログラムがこれに当たります。
特にZ世代は「作る側」に参加することへの抵抗感が低く、モチベーションも高い傾向があります。企業が「完成品を見せる」から「一緒に作る過程を共有する」に発想を転換するだけで、コンテンツの熱量とリーチが変わります。
◾️ 向いているケース:ブランドの人格・世界観を伝えたい・SNSでのオーガニック拡散を狙いたい・ファンコミュニティを育てたい
目的③課題解決のアイデア収集|社内だけでは出てこない視点が欲しい
体験型マーケティングは、「消費者から学ぶ場」としても機能します。ターゲット層を巻き込んだアイデアソン・ハッカソン・課題解決ワークショップは、参加者にとっての体験であると同時に、企業にとっての市場調査でもあります。
大切なのは、収集したアイデアを「参考にした」で終わらせないことです。「あのワークショップで出たアイデアが実際に商品に反映された」というストーリーが生まれると、参加者のロイヤリティと口コミ効果が跳ね上がります。
◾️ 向いているケース:新商品・新サービスの開発フェーズ・特定ターゲット層のインサイトが不足している・社内のアイデアが固定化している
目的④採用・認知の同時獲得|マーケティングと採用を一石二鳥にしたい
特に中小企業にとって深刻なのが「認知度の低さ」に起因する採用難です。体験型マーケティングは、ターゲット顧客への訴求と同時に、自社に興味を持つ人材との接点を作ることができます。
学生や若手社会人を対象にしたオープンカンパニー型の体験プログラム、ビジネスコンテストへの課題提供、インターンシップと紐づいた商品体験会などが典型例です。「知ってもらう」だけでなく「一緒に動いてもらう」体験は、将来の顧客にも採用候補にもなりえます。
◾️ 向いているケース:採用母集団の拡大・若年層への認知獲得・コスト効率よくブランディングしたい
4つのアプローチを比較すると以下のとおりです。
| アプローチ | 主な目的 | 必要なリソース | 効果の出やすい期間 | Z世代との相性 |
|---|---|---|---|---|
| ①使う体験・サンプリング | 商品理解・購買促進 | 商品サンプル・会場費 | 短期(1〜3ヶ月) | △(受動的になりやすい) |
| ②共同制作・アンバサダー | ブランド共感・UGC創出 | ディレクション工数 | 中期(3〜6ヶ月) | ◎(能動的に関われる) |
| ③アイデアソン・ワークショップ | インサイト収集・共創 | 企画設計・ファシリテーター | 短〜中期 | ○(課題解決への関心が高い) |
| ④採用連動型プログラム | 認知×採用の同時獲得 | 人事・広報の連携 | 中〜長期(6ヶ月〜) | ◎(キャリア形成と紐づく) |
体験型マーケティングで失敗しないための3つの注意点
体験の場を作ることと、体験型マーケティングが機能することは別の話です。実施前に必ず確認しておくべき落とし穴を整理します。
注意点①「体験させれば伝わる」という前提は禁物です
体験を通じて何を感じてもらいたいか、体験後にどう行動してほしいかを事前に言語化しておかなければ、参加者の感想は「楽しかった」で終わります。体験の設計とゴール設定は必ずセットです。
特に中小企業は「とにかくやってみよう」が先走りがちです。企画の段階で「この体験を経た人がどんな言葉でシェアするか」を想定し、それを逆算して体験を設計することが正解です。
注意点②参加者を「コンテンツ素材」として扱うと信頼を失います
体験型マーケティングにおいて参加者との関係性は資産です。しかし「写真や動画を取らせてほしいから参加してほしい」という下心が透けると、参加者のモチベーションは下がり、コンテンツの質も落ちます。
参加者が「自分の意見や行動が実際に何かに活かされた」と感じる設計が不可欠です。参加後のフィードバック共有・活用報告・継続的な関係維持まで含めてプログラム設計することが大切です。
注意点③単発で終わらせると費用対効果が出ません
体験型マーケティングの効果は、継続によって複利的に高まります。1回のイベントで劇的な成果を期待するのは現実的ではありません。特に低予算で実施する場合は、「1回の体験を何に繋げるか」という出口設計が最も重要です。
体験をSNS投稿・プレスリリース・採用広報・商品改善のエビデンスなど複数の用途に活用できる設計にすることで、1つの施策の費用対効果を数倍に高めることができます。「体験で終わる」設計は、予算の無駄遣いになります。
よくある質問
Q. 予算はどのくらい必要ですか?
A. 体験型マーケティングは、会場・制作・広告などのハードコストよりも「設計と関係構築」に投資するモデルです。参加者を外部から調達する必要がなく、既存のコミュニティや教育機関と連携する形を取れば、数十万円の予算でも十分に実施できます。重要なのは金額よりも「誰と・何を・どう体験させるか」の解像度です。
Q. 社内にマーケティング専任がいなくても実施できますか?
A. 実施できます。むしろ体験型マーケティングは、社内の担当者が「企画・制作・発信」をすべて担う必要がない点が特徴です。参加者(学生・コミュニティメンバー・顧客など)が主役になる設計にすることで、運営側の工数を大幅に抑えられます。プログラムの設計とマネジメントだけを担当し、コンテンツ制作や企画立案は参加者が担う、という役割分担が機能します。
Q. どこから始めるのがおすすめですか?
A. まず「自社が今最も届けたいターゲット層」を一つ絞り、そのターゲットが既に集まっている場所・コミュニティを探すことから始めるのが最短ルートです。ゼロから集客する施策より、既存の場に乗る形の方が初期コストを抑えられます。具体的な進め方については、弊社サービスとあわせてご相談いただくことも可能です。
私たちについて:株式会社Strobolights・CAREER ROOKIES・ROOKIES GUILD

株式会社Strobolightsは、大学生の「本気のビジネス体験」を起点に、企業・自治体のマーケティング・採用・ブランディング課題を解決する事業を運営しています。代表の羽田 啓一郎は、マイナビで全社年間MVPを受賞後、キャリア甲子園の立ち上げ・経済産業省の政策提言委員を歴任。2020年に独立起業し、立命館大学 産業社会学部 客員教授および武蔵野大学 非常勤講師・キャリアセンター運営委員も務めています。
CAREER ROOKIESは、大学生向け・学年不問のビジネスコンテストです。1日完結型の「ナンバーシリーズ」と、年1回の「グランプリシリーズ」の2種類を展開。東京証券取引所の後援を受け、決勝大会は東証Arrowsで開催されます。慶應・東大・早稲田・立命館など全国の大学生が参加しており、2025年度のプレエントリーは658名にのぼります。
ROOKIES GUILDは、CAREER ROOKIESに参加した学生のみが加入できる実践型共創コミュニティです。企業・自治体から依頼を受けたプロジェクトを、学生が主体となって企画・実行します。学生のマネジメントおよびアウトプットのクオリティコントロールはStobolightsが全面的に担当するため、企業側の運営工数を最小限に抑えながら、Z世代との本質的な共創が実現できます。「企画だけで終わらないマーケティング」を、学生と企業が一緒に作り上げるプログラムです。
実践事例:体験型マーケティングを「企画」ではなく「実装」まで動かした2つのケース
ここまで解説した「②ブランド共感の醸成(共同制作型)」と「③課題解決のアイデア収集(フィールドワーク連動型)」を実際に組み合わせた事例を紹介します。いずれもROOKIES GUILDを通じて実施されたプロジェクトです。
事例①パナソニック株式会社:Z世代が自ら制作した食洗機プロモーション動画

【背景】
パナソニック株式会社のキッチンソリューションBUは、食洗機のZ世代向けプロモーションという課題を抱えていました。若年層への訴求において「自分たちでは気づけない視点が欲しい」という問題意識が出発点です。
【PHASE 01:ビジネスコンテストで課題を解く】
CAREER ROOKIES GP 関西予選をパナソニック滋賀工場で開催。16チームの学生が食洗機のZ世代向けプロモーション案を競い合いました。単なるアイデア発表ではなく、現場を見て・考えて・プレゼンするという体験プロセスが設計されています。
【PHASE 02:有志チームによる動画の完全自主制作】
コンテスト後、有志9名がROOKIES GUILDとして食洗機プロモーション動画の企画・脚本・撮影・編集を全工程自主制作しました(全6話)。「食洗機彼氏図鑑」というコンセプトは学生発案。立命館大学映像学部生が監督を務めるなど、学生の専門性がプロジェクトに活かされました。
【PHASE 03:プレスリリース配信】
完成した動画コンテンツはプレスリリースとして配信され、メディア露出を獲得しました。
【結果と担当者コメント】
参加学生の97%が「パナソニックへのイメージが向上した」と回答。95%が「食洗機を使ってみたい」と答えました。
「私たち自身がこれまで気づけなかった視点や価値、新しい切り口に数多く出会うことができました」
パナソニック株式会社 キッチンソリューションBU 食洗機SBU|中石 尚吾様
事例②北海道上川町:Z世代との地域共創が「社会実装フェーズ」に到達

【背景】
北海道上川町は「感動人口」という独自の概念を軸に、Z世代との地域共創を模索していました。移住促進や交流人口の増加ではなく、「上川町に感動する人を増やす」という問いに対して、若者の視点から答えを出したいという課題意識が出発点です。
【PHASE 01:東京でのビジネスコンテスト】
CAREER ROOKIES 8(東京・1日完結型)のテーマとして「都市と地域を越境する新しい働き方」を設定。大学1・2年生4名のチームが「学生団体コタン」を提案し、優勝しました。
【PHASE 02:北海道上川町へのフィールドワーク】
優勝チームを上川町に招待し、2泊3日のフィールドワークを実施。役場訪問・街歩き・スノーアクティビティ体験・北大生との議論など、「机の上では得られない体験」を通じて地域への解像度を高めました。
【PHASE 03:役場への最終プレゼン】
フィールドワーク後、「実装案+新提案」の2軸で役場に最終プレゼンを実施。来年度以降の社会実装を前提とした協議フェーズへと移行しました。「企画で終わらせない」体験型共創の典型例です。
「実際に上川町に来て、地域の魅力や課題に向き合いながら行動してくれる姿が印象的で、柔軟な発想や前向きなエネルギーに多くの刺激をもらいました」
上川町役場職員 東京事務所|三谷 航平様
上記の事例のような「Z世代との体験型共創プログラム」について、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ:「体験の場を作ること」ではなく「体験を通じた関係を作ること」が正解です
体験型マーケティングは、大きな予算がなければできないものではありません。重要なのは「誰に・何を体験させるか」の設計と、「体験後に何につながるか」の出口設計です。
イベントを開催することがゴールではなく、体験を通じて動いてくれる人・語ってくれる人・使い続けてくれる人との関係を作ることがゴールです。中小企業ほど、この「関係の質」で戦う余地があります。
Z世代へのアプローチをはじめ、具体的な進め方や費用感については、ぜひお気軽にご相談ください。
監修者プロフィール

羽田 啓一郎
株式会社Strobolights 代表取締役
立命館大学 産業社会学部 客員教授/武蔵野大学 非常勤講師・キャリアセンター運営委員
新卒でマイナビ(旧・毎日コミュニケーションズ)に入社し、新卒採用営業に従事。外資IT・エアライン・総合商社など大手企業を担当し全社年間MVPを受賞。その後キャリア教育事業責任者としてキャリア甲子園を立ち上げ、経済産業省の政策提言委員も歴任。2020年に独立起業し、複数大学でキャリアプログラムを担当しながら、CAREER ROOKIESおよびROOKIES GUILDを運営。